ブラジリアン柔術の歴史｜講道館柔道から生まれた世界的格闘技の進化
25.04.03
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ブラジリアン柔術とは？
ブラジリアン柔術（Brazilian Jiu-Jitsu、略称BJJ）は、寝技を主体とする格闘技で、関節技や絞め技によって相手を制圧・勝利に導くスタイルが特徴です。
「小が大を制す」という理念を体現し、体格や筋力差に左右されにくい技術体系が、競技者のみならず一般層にも広く支持されています。
本記事では、ブラジリアン柔術の歴史を中心に、柔道との関係、発展の過程、そして現代における社会的役割までをわかりやすく解説します。
起源：日本の柔道と古流柔術の影響
ブラジリアン柔術の源流は、19世紀末に日本で嘉納治五郎によって体系化された講道館柔道にあります。
講道館柔道は、それ以前の古流柔術（柔術諸派）の技術を整理・近代化し、教育的・競技的側面を備えた新たな武道として誕生しました。
この日本の柔道・柔術が20世紀初頭、海外へと広まる中で、ブラジルにも伝わることになります。
ここで重要な役割を果たしたのが、柔道家であり武術家でもあった前田光世（まえだ みつよ）です。
前田光世とブラジルへの伝播
前田光世は、講道館の初期門下生でありながら、さまざまな古流柔術や異種格闘技の経験を積みながら、1900年代初頭に世界各国で武道のデモンストレーションや試合を行いました。
その過程で1914年頃、ブラジル北部のベレンに滞在し、地元の有力者であるガスタオン・グレイシーと知己を得ます。
その後、ガスタオンの息子であるカーロス・グレイシーが前田またはその弟子から柔術を学び、それを家族や仲間と共に体系化・改良していきます。
この流れが、現在のブラジリアン柔術（BJJ）の起点とされています。
グレイシー一族による革新と体系化
カーロス・グレイシーは習得した技術をもとに、弟のエリオ・グレイシーらと共に独自の柔術スタイルを形成。
特に、エリオは体格的に小柄だったことから、「力ではなくテクニックで制する」方向に進化させました。
この結果、投げ技主体だった柔道とは異なり、寝技・ポジショニング・サブミッション（関節技・絞め技）を重視した競技体系が築かれていきました。
クローズドガード、ハーフガード、スイープ、マウントポジションなど、現在でも使用されるポジションと技術の多くがこの時期に発展しています。
世界進出と総合格闘技への影響
1980年代後半から1990年代初頭、グレイシー一族はアメリカ合衆国へ進出し、「グレイシー柔術」として技術普及を図ります。
特に大きな転機となったのが、1993年のUFC（アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ）第1回大会です。
当時、打撃系やレスリング系の選手が多かった中で、ホイス・グレイシーが柔術のみで複数の対戦相手に一本勝ちし、世界中の格闘技関係者に衝撃を与えました。
この出来事をきっかけに、ブラジリアン柔術は総合格闘技（MMA）の基礎技術として広く認知されるようになり、世界的な普及が加速しました。
現代日本におけるブラジリアン柔術の広がり
皮肉にも、日本発祥の技術がブラジルで進化し、逆輸入される形で1990年代後半から日本国内でも普及が進みました。
UFCやPRIDEなどの格闘技イベントの影響を受け、多くの日本人選手がブラジリアン柔術の実力を実感。
全国に道場が開設され、愛好者が増加しました。
現在では、JBJJF（日本ブラジリアン柔術連盟）をはじめとする団体が全国規模で大会を開催しており、キッズ・女性・中高年まで幅広い層が日常的に練習に取り組んでいます。
競技としてのブラジリアン柔術の特徴
ブラジリアン柔術は、道着（キモノ）を着用する形式と、ラッシュガードやショーツを用いるノーギ形式の2種類に大別されます。
ルールにおいても、サブミッションの有無やポイント制度が明確に規定され、安全性の高い競技運営がなされています。
帯色（白・青・紫・茶・黒）や年齢カテゴリ（ジュブナイル、アダルト、マスター）、体重階級によって細かく分類され、初心者でも公式大会に出場しやすいのが特長です。
柔術の魅力と未来
競技性だけでなく、護身術・フィットネス・メンタルヘルスの面でも注目されているブラジリアン柔術。
打撃がなく安全性が高いため、初心者や女性、シニア層でも継続しやすく、「生涯スポーツ」としての側面もあります。
今後は、より多様なライフスタイルに対応したトレーニングや、国際大会の充実を通じて、さらにグローバルな競技へと進化していくことが期待されています。
まとめ｜ブラジリアン柔術の歴史を知ることが強さにつながる
• 起源は講道館柔道と古流柔術
• 前田光世の渡航とグレイシー一族による革新
• 寝技中心のスタイルへと発展
• UFCで世界的な評価を確立
• 現在は日本を含め世界中で競技・護身・健康目的として普及
ブラジリアン柔術は、単なる格闘技ではなく、文化・哲学・歴史を内包するライフスタイルでもあります。
柔術の背景を知ることで、技の深みと意味がより一層理解できるはずです。
